固く硬化した掌を大切なもののように包み込んだあの感触。視線はいつも探るもののように鋭く向けられるので慄く。力は抜きすぎても、込めすぎてもいけない。ただあの人の手の中に納まるように上手く、白い軌跡を描くことだけをそれだけを思い描きながらオレは投げ続ける。それを永遠と信じる。見つめられる視線の鋭さに貫かれ血を流しても、それで死んだっていいんだ。「あ、べ、くん」放たれて伸びるものが、ボールだけではないのだと知っていた。受け止められるのを奇跡のように見守っていた。夏の日。
「夏の日」