空っぽになるまで全部、鈍色のナイフを握り締めて、切って裂いて抉り出したところで満足することは決してなかった猜疑の視線の情熱を知らない子供の無邪気さを装ってキスをしたね。居場所のないチョコレイトの味で舌先が痺れた。あああ。恵まれた時代に生まれてしまうという不幸。今日もまた、今もまた、ブラウン管の向うで人類の行進は止むことも無く止め処無く、ザッザッザッ……、行列の平穏に惰性的に刻む秒の群れが僕に教示し続けていた「我々には事件が必要である」僕は知っていたんだ、本当だよ。子供じみて甘いお前の唇は冷笑を引きつれて、ついばむ僕の咽喉すら凍らせる。嘲笑と蔑視と精液とが二人の空間を構築しやがて決壊にむけて増幅し増長し積み重ねられた日々の中を泳いでいた。繋ぎあっていたその一瞬も首を掻こうと窺っている黒くくろく黒く、罵倒を吐く眼窩。骨も肉も蕩けているのに視線だけがいつまでも鋭く夜を貫いていて、それがひどく僕たちを醜くさせていたね。縊り殺したい。退屈と殺意を天秤にかけて、その間に収まるものがなにかを探ろうとしていた。愉しかったよ「L」。睫に塩辛さを滲ませることはきっとない。茶番だったのだから。なにもかもすべてが。嗚呼。「カートゥーン」