波間で惑溺するように嘘と真実が二人の空間を圧迫し過密し息もできず声も出せず。シーツの中の一対のクエスチョンマーク。夜の中で竜崎は白い指先を遊ばせていた。幾億の細胞で構築された僕の肉体の上で。指先に辿らせる皮膚の線になにかを見出そうとしているその思惑のわずかばかり外の、境界線ギリギリの皮一枚のところへ身を隠すことを生業にしようとはあの日幼かった夜神月には分かるまい。疑惑と詭弁とを武器に向かい合っているので、どこまでも平行に足跡を残す。僕たちは孤独だ、凸と凹で繋がりあいながらその事実に気付く。肉体の熱は視線の冷たさに相殺されて久しい。貧しい肉の弾力が殺意ばかりを生み出すので性質が悪い。行為は常に過度だ。竜崎の爪が僕の皮を裂いて血を流すのなら(『おしっこをしてあげようか?』)僕は彼の中を汚そう。立ちのぼる尿臭とふくらむ腹に苦しむ彼の顰め面を美しいと思っている。(『あなたは狂っていますよ』)頬を張る。陶酔に僕は哂った。あああ汚濁するお前は奇麗だなああ、あ。射精する意識の遠く果てで破滅の音がしている。それは僕かお前か。殺人願望。取り巻くシーツは様々な体液に溢れて、おぞましいよね、まどろむその中でキスをしたんだ。 「SEX」 *元ネタはAni Difranco |